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「滋賀県土地開発公社事件A」 大津地検検事正との出会い

大津地検は検事正、次席検事以下数人の検事が勤務。
独自捜査はほとんど無く、専ら送致(送検)事件の処理と公判立ち合いが仕事だった。
私にとって検事のイメージは法廷に立つ姿だけで、警察の捜査内容を具体的にどのように吟味し、起訴、
不起訴などを判断ているのかも知らなかった。

法務省の職員録で大津地検の検事正の名前と官舎を調べ、午後8時ごろにその官舎を訪問してみた。
もちろんアポイントを取っていたわけではなく、いわゆる「夜回り取材」を真似てみたわけだ。
琵琶湖畔の瀬田川に近い官舎が並ぶ一角にある検事正官舎は木造の古いが立派な建物だった。
門扉の脇にあるインターホンを押すと、しばらくして玄関の灯りがつき中から和服姿の大柄な男が現れた。

私が社名を名乗ると「おう?」と不思議な表情を見せたが、玄関を開けてくれ応接間に通された。

「ここへ新聞記者が来るのは初めてや」

当時の竿山重良(さおやま・しげよし)検事正はスコッチウィズキーのボトルをテーブルの上に差し出し
「で、君の要件は?」と興味深そうに私を見た。

私には、検事正とこんな形で向かい合えるとは全くの予想外。
「あの、私は…」と、自分が新人記者で、検察庁の組織も知らないこと、滋賀県土地開発公社の疑惑、
県警捜査2課の内定状況、捜査の見通しなども知らないことを正直に打ち明けた。

「ふうん」と、検事正は愉快そうに「記者は正直なことは大事や。しかし君は正直の上にバカがつくな。
ま、一杯飲め」と笑みを浮かべてくれた。

「この事件のサンズイは難しい」とウィスキーのグラスを見ながら、検事正は事件に対する考え方を教えて
くれた。

「あの、サンズイって…」と間抜けた質問をする私を見て
検事正は「ほんまに、君は。それぐらい勉強しとけ」と大笑いをして見せた。

サンズイとは汚職(贈収賄事件)の隠語で「汚」という字がサンズイ編であることから、捜査員が隠語として
使っている。

検事正は警察官の職制と比べると、各府県警の本部長と同格、あるいはそれ以上の地位にある。
また贈収賄や背任事件は立件が難しいとされているため、警察は検察官に相談したうえで強制捜査に
着手することが通例になっているようだ。滋賀県土地開発公社事件は、贈収賄と背任について十分な
立証ができなかったが、核心部分は所得税法と法人税の違反事件として有罪が確定した。
大津地検は国税局の協力を得て、大型の脱税事件として起訴に踏み切った。
検事正は、それを私に示唆してくれたのだった。

大津地検の検事正と親しくなったことは、私には大きな幸運となった。
捜査の難しさや、証拠、証言など価値判断に検察庁が極めて重要な役割を負っていることを教えられた
私は、この経験がきっかけで検察庁の捜査に強い興味を抱いた。
これが司法記者としての私のスタートだった。

作家 津島稜